Gタンパク質共役受容体(GPCR)は細胞膜上で神 経伝達物質やホルモンを認識する生体センサーです。また、嗅覚、味覚、視覚な どを感じるのもGPCRの役割です。7回膜貫通部位を持つという特徴をもち、タンパク質の中で最大のスーパーファミリーを形成しています。現 在臨床的に用いられている薬の約半分がGPCRに働くと言われているので、創薬の大きなター ゲットといえます。リガンドが結合したGPCRは細胞膜の内側にある三量体型Gタンパク質(αGDPβγ)に作用し、GDPの遊離を促進します。 GDPが解離した後αサブユニットにはGTPが結合し、三量体型Gタンパク質はαGTPとβγに解離します。αGTPとβγはそれぞれ酵素やイオン チャンネルに作用して細胞内で情報を発現します。ヒトゲノムプロジェクトによって明らかにされた遺伝子配列からGPCRをコードすると思われる未知の 遺伝子が多数見つかってきており、これらはその受容体が結合するリガンド(身体の中に存在するホルモンなど)が不明であることから「オーファン GPCR(孤児受容体)」と呼ばれます。オーファンGPCRのリガンドを明らかにし、その生理機能と作用機構を解明すれば全く新しい作用を持った薬の 開発につながる可能性があると考えられ、我々はオーファンGPCRに対するリガンドを同定しようとしています。

 


オーファン受容体;遺伝子が同定されているがくわしい生理機能、特に特異的な生体内リガンドが同定されていない受容体。本文では特に機能不明な GPCRについて用いているが、より一般的にはGPCR以外の受容体に対しても用いられる。ヒトゲノム中にはまだ数百のオーファンGPCR受容体が存 在すると考えられ、それらの機能解析はポストゲノム研究の大きな課題の1つである。

 

戻る